※ R18表現あり 尚、このページのお嬢様に限り非・パイパンであります


―― 健康を診断するための検査で、何故、不健康になる程、疲労しなければならんのだ!!

まる2日間をかけて隅から隅まで全てを調べられた後、最後の関門とも言うべき検査を終えた後のことだった。

「絶対安静ですから。動いてはいけませんよ」と看護士から五月蝿いほどの注意を受けて不快な熱に苛まれながら眠りについたインテグラは、今は目を覚まし、片目をぼんやりとあけて、宙を睨んでいた。

歳も歳ですので、念には念を入れて検査をなさって下さい―― と、まぁ、そう言うことらしいが、ここまで徹底してやることはないだろう!と思うのだ。

血管の詳細な検査をするために使った造影剤が身体に合わなかったらしく、吐き気と眩暈、それから熱が出て朦朧としたが、六時間ほど眠ったら体調も落ち着いてきたようだった。

だが、やはり身体が火照り、その上だるくて具合が悪い。

カテーテルを挿入した左内腿の動脈に開けた穴は、ほぼ塞がったと思われる。だが、安静時間が過ぎるまでは、絶対に動いてはいけないと念を押されているのだ。

まれにこの大動脈から検査後、大量の出血をすることがあり、『大動脈からの大量出血は生命を脅かす代物ですぞ』と、さんざん医師から脅かされていた女主は、医療用のベッドの上で、「はぁぁぁぁ~」と盛大なため息をつくことしかできない。

両足には固定用のクッションが置かれ、左太腿の部分を圧迫するためにバンドもぐるりと巻かれていて、それが止血の役目もしている。足は絶対に動かせない。その上、上半身を起こすことすら禁じられている。

普段は集中治療室に使われるその医務室に、ひとりでひっそりと身を横たえているしかないというのは、何と苦痛なことか! いや、苦痛なのは身動きひとつできないこの現実だ!!

インテグラは眉を寄せて不快な顔つきで壁掛け時計を睨みつけたが、当然それで時が進むはずもない。予定では、安静時間の解除までもう二時間。されどそのニ時間は煉獄で過ごす責め苦のように、今の女主には感じられた。

さらに深刻な顔つきで、眉間にシワを寄せて「ハァーーーー」とため息をつく女主。

アイパッチの紐が額にかかる部分が痒いぞ―― そう思った女は、腕をちょっと動かすくらいなら、大出血にはならないだろう?と、おっかなびっくり掛け布団から腕をそろそろと出し、そおっと少しずつ腕を持ち上げる。

右手のひとさし指の指先で、アイパッチの紐が額に掛かる部分を、ゆるゆるとした動作で掻く。綺麗に磨かれた桜色した爪先が皮膚をコリコリとこすると、むずむずしていた痒みもおさまり、少しは気分が落ち着いた―― と、思った途端、今度は何やら右足首のあたりがモソモソしはじめる。

―― かっ、痒みは痒みを誘発するんだっけ?!でも、何で足首??

流石に身体を起こして足首をポリポリ掻くわけにはいかない。それが出来ないのは、十分にわかっている。しかしモソモソ感は増して、それは確実に『痒い』というレベルに上昇しつつあった。

円熟の域に達した女主は、その成熟度に似合わない舌打ちを「チッ!」と打つと、もどかしげに頭を左右に振って苦虫を噛み潰したような顔をする。

その時だった。

「おぃ、何だ。何をやってる、我が主?」

オレンジ色を含んだ黄色い非常灯だけがともる薄暗い部屋の影の濃い部分から、男の低くて無駄に耳に心地いいベルヴェットボイスが響いた。インテグラがその影の部分に目を凝らすと、濃い漆黒の塊が巨大な人の形を取りはじめ、次第にはっきりとした人の影となる。

その影が非常灯の明かりがこぼれるベッドの方へと、足音を立てない肉食獣のような優雅さで忍び寄ってくると、濃い陰影の中でも顔の造作がとても整っていることのわかる男の姿が見えた。

唇が薄く顎が少し尖っている容貌はこの男の冷酷さに見合うものだが、それはさらにこの男に非情な印象を与えている。だが、血塗られた色の瞳の中には、子供のような好奇心が浮かんでいるのを、長い付き合いの女主人は見抜いていた。

この状況で、何かしら子供の悪戯じみたことをされても困る―― そう思った女主だったが、男の顔を見ても当然足首の痒みは治まらず『いいや、こう言う時こそ従僕を使わん手はなかろう』と判断する。

そしてインテグラは憮然とした顔のまま「右足首が痒いんだ。まだ安静時間だから動けん。足を掻いてくれ」と不死者を統べる王へと命令を下すのだった。

伯爵と呼ばれた男に『私の足を掻け』と不遜な命令を下した女主。しかし自尊心の高い男は、そんな自分の主人に気を悪くすることなく、薄い笑いを作ったようだった。

インテグラの感情をワザと覆い隠したような冷たい声音の命令に、男は主に近づきながら口の端をニィっと引き上げて、皮肉さ満開の笑いを作る。

そして「御意のままに、我が女ご主人さま」と、慇懃すぎる礼を取ると、女の足元の布団を凶暴な性格に見合わぬ繊細な手つきで、そっとまくるのだった。

「もう何時間このままなのだ、インテグラ?」

ゆっくりと布団をはいで、女の引き締まった足から血栓防止用のストッキングをスルスルと脱がせて引き締まった足首を晒した男は、そう主へ尋ねる。

「あと、二時間ってとこだな。あっ~あ、そこ。もっと強くしていいから」

白のグローブを取った男の手は冷たくて、熱を持った肌に当たるとひんやりとして、とても心地よかった。

蜂蜜色の肌は日焼けによるものなのか、歳と共に黄金色の輝きを増してた。それでも肌のキメは相変わらず整っていて艶やかな陶磁器のような肌だった。

鍛えられた足が持つ躍動美と美しい曲線を描くふくらはぎが、きゅっと引き締まる足首へと続く優美なラインは例えようもなく美しい―― 男はその鑑賞に値する脚を、目を細めて微笑を浮かべてながらゆっくりと眺める。

女が指示するあたりを優しく爪先でカリカリと引っ掻くように撫でると、「あぁっ、そこ。そこ、もっと。ああっ~気持ちいい」と熱に浮かされた甘さを含む声で、心地よさを伝えてくる自分の主に、男は次第に眉を顰める。

普段、躰の敏感なところに愛撫を重ねても、「もっと」とも「気持ちいい」とも決して言わない強情な主が、こう言う時だけは何故か素直なのだ。

強情な女主のその珍しい姿に、男はむっと不機嫌になって意地悪な復讐心が次第に頭をもたげはじめる。

―― 幾らでもその口から甘い睦言を紡げるはずだがな。この女は、こう言う時だけ何故、素直なんだ!

三十年ぶりの逢瀬でも、素直にも正直にもならない、自分の主。それはたぶん、この女の性分。それはわかっていたが、自分が居ない間に大人の女の余裕と包容の深さを増した主の成熟に、下僕は無性に悔しくもあったのだ。

この女を困らせてやりたい―― 思慕する女性に無性に意地悪をしたくなるのは、古今東西老若を問わない餓鬼のような心を持つ男の性(さが)なのかもしれない。だがそれはほぼ100%迷惑以外の何ものでもないのだが。

自分がロンドンをハチャメチャに破壊し尽くした一助を担った上、挙句の果てに暴飲暴食をかましたことによって消えてしまったことなど棚に上げ、意地悪を思いついた悪魔は誘惑者の笑いを口に刻んでから、口の両端をニィっと引き上げて牙を剥いて笑う。そして屈んで足先に顔を近づけると、女の右足の親指をかぷっと、冷たい口の中に含むのだった。

その突然の暴挙と冷たい口内に嬲られる衝撃に、流石の女も「ひゃっ!!ちょっと、やめろってばっ――!!」と、ワンオクターブ高い声を上げて残る左の足で男の頭を蹴ろうとする。が・・・・・・しかしッ!

―― しまったっ!!私は今、絶対安静中!?

そう思いとどまった女は、口でしか抗議方法がないこの大変な状況に、熱に浮かされた顔を青ざめさせる。

ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てて自分の足の指を嬲る男の舌先が、今度は足の指の股へと挿し込まれると、インテグラは躰を震わせながら、漏らしそうになる甘い声をかみ殺す。

「やっ、いやだ、そんなとこ、汚いだろっ!もぉ、やめろったら!」

熱に浮かされて疲れた体から紡ぎだされる抗議の声は、今日は鼻に掛かっていて、とても甘く聴こえるな―― 男はインテグラの足の指をぴちゃぴちゃと音を立てて舐めながら、厭な笑いを作った。

今度は、ひとさし指と中指と薬指を一緒に咥え、嬲るように執拗に舐めると、女が身体を小刻みに震わせるのがわかる。さらに牙を立てて柔らかく噛むと、女が押し殺した声でうめいて、身体を痙攣させるのがわかった。

牙を宛てられた生理的嫌悪感と、男に嬲られて敏感になった指先に加えられる愛撫に悶えるように身体を少し震わせて、インテグラはアーカードに抗議の声を上げた。

「もう、やめろ!私は安静中なんだぞっ!!主人の身体を労われんのか、この馬鹿吸血鬼!!」

しかし、その熱に浮かされた甘い声での抗議には、さらに男を煽るものが含まれていた。

「では、お前が動かなければいいだけだろう、我が主。そんな熱に浮かされた甘い声で、いやだ、駄目だと言われても、煽ってるとしか思えん」

男は、インテグラの足から顔を上げると、掛けてあった布団を全部剥ぎ取って、前を紐で止めているだけの病衣にも手を掛ける。三箇所ほど蝶結びで止められていた病衣の紐を解くと、それをそっと剥いで、女の肌を外気に晒した。

すると熱を上げた身体はさらに紅潮して、女の黄金色の肌がえもいわれぬ色香を纏った色合いに染めあがり、その姿が従僕の眼前にさらされる。

「おばあちゃんになった女に、こんな無体をする馬鹿かどこにいる!!」

プラチナブロンドの髪を乱した女は、そう自分の従僕に怒りをぶつけだが、その目は熱と与えられた快楽の兆しに潤んで見えた。

たったひとつ残された青玉の瞳が濡れたように色を濃くして自分を見下ろす男を睨んだが、それを見た吸血鬼は嬉しそうに笑うのだった。

「今、ここに確かに存在している我が主は、労わりが必要な歳には見えんよ。十分に女盛りだ」

そう言った男の顔は冷酷なのに凶暴さが隠されていて、この男が今からやろうとしていることが、碌なことでは無さそうだと、女は眉をしかめる。

「そう、用心するな。絶対に安静なのだろう?今は無茶はせんよ、インテグラ」

そう言うと、胡散臭いものを見る目つきで自分を見上げる女へと、男は長く伸びた髪を散らして覆い被さった。

熱を帯びた身体は緩慢なのに敏感で、男が冷たい唇で這いまわり、その舌先で舐め上げるたびに跳ね上がりそうになる。しかし、その震えてのたうちそうになる女の身体を、吸血鬼は怪力で抑えつけると、その舌先の愛撫で勃ちあがった赤く色づく乳房の頂きを嬲るように舐め上げた。

執拗に舐め、コリコリと勃ちあがった頂点を軽く噛んでは、牙でしごいて女に甘いうめき声を出させる。

さらに、もうひとつの頂きも音を立ててきつく吸い上げ、コリコリと甘噛みして、女に痙攣するような快楽を与えると、主の女は今までに聴いたことがないような甘い声で喘ぎを漏らした。

以前よりは柔らかさを増した成熟した二つの乳房を十分に堪能した男は、女の身体に体重をかけないように気を使いながら、次第に引き締まった腹筋へ、そこからまた下の秘せられた場所へと、舌と唇を這わせていく。

そして、女主が検査のために身につけていたT字帯を解こうと、その紐に手を掛けた時、インテグラが今まで出したことがないような切羽詰った声で、それを止めた。

「だ、ダメだ!!アーカード、それは絶対にダメ!それを取ることは許さんっ」

青玉の瞳を見開いて、言葉の割に口調は懇願のような響きを持って、女は吸血鬼の暴挙を止めようとしたが、男はそれを聞いてさらに意地悪くニヤリと笑う。

それは人を誑かす妖しい化け物の笑いなのに、目には悪魔のような狡猾さと老獪さが滲んでいて、肝が冷えるような意地の悪い嗤いだった。

「では、取らなければいい訳か、お嬢さん?」

こんな五十を過ぎた女をつかまえて、『お嬢さん』とは何なんだ!?あ、いや、確かに、それ相応の歳経た男だから、それもありなのだろうか?―― と、女は一瞬別次元に思考を飛ばしたが、男の口を裂いた厭な笑いを見て、眉をしかめる。

「・・・・・・いや、取らなくてもダメ。そこは動脈に穴を開けた位置に近いから、触ってはダメだ。―― しかし、お前、その笑いは恐いぞ。女に嫌われるぞ」

いや、俺は女主にだけ好かれれば、それで十分なのだがな―― と、思いつつ男はさらに狡猾な化け物の笑いを深める。

「ダメな理由はそれだけじゃないんだろ、インテグラ?」

男は女の身体を避けて、狭い医務室のベッドに覆い被さり、女を間近から覗き込む。

血塗られた赤い瞳を厭な笑いで眇めた男を見て、女は頬を染めてぷいっとそっぽを向いた。そして、眉根を寄せて、片方の目尻も薄く紅色に染める。

「私が知らないとでも?しかし、お前にそんな趣味があったとは知らなかったぞ。」

「―― 何だよ、そんな趣味って?」

女は目尻を染めたまま、細めた硬質なブルーアイズで挑むように男を見上げた。

「あの色白の妙齢の看護士に、ここの毛を剃ってもらっただろう?」

そう言って男は、冷たい指先でT字帯の上をなぞる。

「あの若い看護士の顔の前にここを晒して、頬を染めながら剃毛プレイを愉しむような女だとは知らなかったぞ。私が居ない間に随分と愉しい趣味を持ったものだな、我が主」

「てっ・・・・・・てッ、て、剃毛プレイってーーーっ!お前、何、勘違いしてんだ、馬鹿っ!あれは、医療行為の一環で・・・・・・」

「若い女に剃ってもらって興奮するなんぞ、そんな好い趣味があるとは知らなかったぞ。今度は私がしてやろう、我が主」

女の言葉に耳を貸さない、女主への思いだけは一途な男は、そう言ってそれは愉しそうに冷たく笑う。

顔を真っ赤にした女は、純粋な医療行為を変態的な興奮を誘う性的遊戯と勘違いされ、ただ口をパクパクさせて熱を上げ、すでに朦朧としかかた頭で、抗議の言葉も出せずにいた。

「それに、ここをあの女に広げて見せただろう?足を広げ、肉厚の柔らかい唇のような桃色の襞を指先で広げられ、中の熟れたラズベリーのような肉をヒクヒクさせてお前が悶えていたのも、私は全部観ていたんだ。随分といい趣味を持ったな」

「ばっ、馬、馬鹿っ!!あれも医療行為なんだって!安静の間は、トイレにも立てないんだぞ。その・・・・・・にょ、尿道管を入れるなんて、私だって恥ずかしかったんだからなっ!!」

「そうか、羞恥プレイが好い訳か。しかしお前は、私がいない三十年の間に随分と趣味の幅を広げたな。その上、私という情人がいながら、若い女と厭らしい行為に耽るとは、度胸の良さは相変わらずだ」

そう言って口の両端をニィっと吊り上げて笑った男は、厭らしいのに冷たくて残酷で...... その顔を見た女は、思わず肌を粟立てる。

この男は、敢えて物事を穿った見方で見ようとしているのではないだろうか?!でなければ、自分の女主人に『剃毛プレイが好きなのか?羞恥プレイがいいのか?』とは、ならないだろう!! それに若い女と厭らしい行為に耽ったと言いがかりをつけて、勝手に独占欲に煽られてるのは何なのだ!?

―― このままでは、安静解除までの二時間を無事に過ごせるとは思えんッ!!!

女は顔を青ざめて絶望的な状況を呪ったが、男は凶悪な笑いを見せると、T字帯の紐を解き、秘せられた場所をあらわにした。

「ちょっと、やめろって言ったろ!!」

インテグラの抗議も虚しく、男はその白い布をするすると外すと、晒された秘所を見つめて、気持ちが悪いくらいに美しい妖艶な夜族の笑いを見せる。

もともと下生えの色も髪の色と同じ薄い色彩だったし、茂み自体も淡いものだったが、その下生えが刈られてしまったそこは、少女のような瑞々しさに淫猥なものを隠し持つ、一筋のスリットとして目に映った。

そしてそのスリットには管が挿し込まれ、卑猥な眺めをかもし出している。

男から加えられた愛撫のためか、その管に繋がれた切れ込みは透明のヌルヌルとした雫で濡れ光っていた。

「いい眺めだ。少女のように清廉なのにとても淫猥。我が主どの、随分と雫がこぼれているぞ」

男の言葉に更に熱を上げて顔を紅潮させた女はぷいっと横を向いて、下僕から視線をそらす。そして怒ったように眉を寄せて、低くてぶっきらぼうな声で呟いた。

「あんな風に淫らなことをするからだ。お前にあんなことされたら、濡れるにきまってるだろう――」女主の怒ったような口ぶりを聴いた男は、目を細めて更に妖艶に笑ってみせた。それは、嬉しくて堪らない笑みだったのかもしれない。

「私がしたから濡れてしまったという訳か。では、ちゃんと責任を取らないといけんな」そうベルヴェットボイスの低い魔声で呟いた化け物の男に、女はギクリと身体を震わせる。

「お前っ、私は安静中なんだぞ!?別に責任なんぞ取らなくても―― は、あんっ!」

女が完全に怒り出す前に、男は繋がっている尿道管を指先で摘み、その管を軽く揺する。するとインテグラが不快なのか快楽なのか区別がつかないうめき声を上げた。

「責任の所在は常に明らかにせねばならんだろう、指揮官殿? それに男が欲しくて雫をこぼしている、こんなものを見せつけられて、私の欲情が熾らない訳がなかろう?」

全く何時になっても分からん女だな、お前は。初心なのにも限度があるぞ―― そんな勝手なことを言いながら、男は女主がうめき声を上げるその管を揺らしながらクレパスへと指を這わせ、その先端に隠れていた陰核を捏ね上げた。

陰核を剥くように摘み上げ、隠す茂みを刈られたそこに、赤い花芽を剥き出しに起立させる。

終いには管を引っ張ったり押し込んだりしながら、剥きだしになった敏感な赤く熟れた陰核を指先で捏ねて、女に甲高い戦慄くような悲鳴を上げさせた。

「出したいなら、我慢せずに出せ。どうせ管が繋がってる」

快感を伴う尿意に女が腰をうねらせるのを怪力で押さえつけたまま、男は悪魔ような誘惑者の声を使って、女の耳元で優しさを装って囁く。

身のうちを這い回る不快感にも似たむずがゆい快楽の刺激に、陰核をつままれる鋭敏な快楽が加わって、女はその管から生温かい液体を放出して、身体を小刻みに痙攣させ、上りつめたようだった。

その上気した身体を見つめていた男は、「抜くぞ」と言うと応えを待たずに、女の身体に繋がれていた尿道管をズルリと抜いた。

躰の器官を引っ張られるような不快感に隠された快楽に、女はたまらずうめき声を上げて身を震わす。

「ふぅーん。こっちも敏感なのだな。また、愉しみが増えたな」

熱を上げた躰で朦朧としつつも、男の前で放尿してしまった羞恥に更に肌を紅潮させている女を見ながら、そう言って愉しそうに笑うのは、やはりこの男が意地の悪い魔物だからに違いない。

「もぉ、やっ......!こんなの絶対にイヤ、よ。この変態淫乱吸血鬼っ」

言葉を出すのも億劫な気だるげな女から、潤んだ青の目で睨まれた男は、内心苦笑しながら止血用のバンドが巻かれていない方の右の足を持ち上げる。

色を濃くした潤んだ青い目で睨まれ、さらに淫欲を煽られた魔物は、トゥラザースから自分の猛った肉杭を取り出すと、下生えが刈られて剥き出しになった女の膣口に、それを宛がった。

「ダメだって、アーカード!安静中なんだぞ、傷が開いて出血したらどうするんだ!!」

「大丈夫だ。その時はベッドが汚れないように、全部飲んでやるから安心しろ」

「もぉ、そうじゃなくって!出血多量で死んでしまうだろ!?」

「大丈夫だ。その時は私の血を飲ませてやる。」

この不死者の血を飲ませられたら、どんな事になるのか?―― それを想像するだけで、女は眉を顰め、不快そのものの表情を浮べる。

――この男の『大丈夫だ』というのは、全く当てにならんッ!!

そう思った女は、「それは嫌。絶対に駄目だ、アーカード。お前の血なんぞ絶対に嫌だ。何があってもそんなことは、絶対にするなよ」と怒ったように言うのだった。

―― この女は・・・・・・人間として生まれて、人間として死ぬのだ

この女を手に入れたと思っても、それは一瞬の星の煌きのようなものだ。

この女の全てを手に入れることは決して叶わぬのだ。

女主の発した言葉は、その事実を男に容赦なくつきつけるもので、不死者の王の鼓動を刻まぬ心臓に、絞るような苦しい痛みを与えた。アーカードはその絞るような胸の痛み覆い隠すように、顔に冷徹な微笑を浮かべると、欲望の猛りを女の躰へと、ゆっくりと飲み込ませる。

さすがに、残酷で横暴な吸血鬼でも、その夜に限っては、女の身体を多少は慮ったようだった。

そっと持ち上げた右足の隙間に巨躯を滑り込ませた男は、いつにない緩慢な動きで女の膣をゆっくりと擦り上げる。

入り口の花弁の隙間に先端だけを埋め込んで、その肉杭の先だけで女をゆるゆると刺激すると、今までにないもどかしさにインテグラは眉根を寄せて、漏れそうになる声をかみ殺す。

下生えが刈られた秘所は、男を咥えて吸い付くように纏いつき、濡れた花弁が余すことなく晒されて、男の欲望をさらに煽る。

そして、ゆっくりと女の膣内に己の全てを埋め込んだ男は、女が敏感に反応する部分をゆっくりとその肉杭を抽挿して刺激した。

最奥を突き抜けるような激しい抽挿と違い、柔らかい快楽に苛まれた女は、次第に声をかみ殺すことが出来なくなり、言葉にならないうめき声と甘い響きを持った鳴き声を上げ始めた。

唯一自由に動かせる頭を振るたびに、女の美しいプラチナゴールドの髪が、月の雫を零すようにキラキラ非常灯に煌いて、男の視線を奪う。

その緩やかな快楽が繰り返させるたびに、小さな波のような優しい悦楽が訪れ、それがやがて大きな波のようにうねり、女を恍惚とした境地へと誘い込む。

襞を戦慄かせて男の肉杭をきつく締め付け、その先端のくびれが敏感な部分を引っかくようにこすりつけられるたび、女主は下僕の名を呼びながらソロ・ソプラノで切なく歌う。

そして男が抽挿を速めると、女はその冷たく硬く突き入れられた欲望を、更に深くまで導くように膣と襞を戦慄かせ、きつく締め上げたまま仰け反るように背を持ち上げた。

跳ね上がるような女の痙攣を力で押さえつけた男は、女のきつい締めつけに少し眉を寄せてから、奥へと冷たい欲望を吐き出した。

快楽でのたうちそうになる女の身体を抑えたのがよかったのか、それとも多少ともあった男の思いやりが効を奏したのか、インテグラの大動脈の穴は広がることはなく、出血もしないようだった。

しかし、身体の熱が増した女は、とろんとした柔らかい青色に変じた瞳を今は閉じて、ぐったりとベッドに横たわっている。だが、そのはっきりとはしない声で、インテグラは従僕に目を閉じたまま命令するのを忘れなかった。

「いいか、その何だ・・・・・・その、お前が吐精したものとか、零れたもので汚したところは、拭いておけ。T字帯もちゃんと結んでおくんだ。それから病衣の紐も結べよ。あぁ、ちゃんと布団もかけろ。あと、血栓防止のストッキングも忘れるな

・・・・・・いいか、ちゃんとやるんだ―― このままじゃ、医者と看護士から怒られた上、上官の尊厳も台無しだ」そう言った女は「はぁぁ」と熱いため息を吐く。

「管も戻すか?」女の身体をタオルで拭いてやった男が、珍しく気を利かせたその問いに、女は眉間にシワを寄せる。

「いや、それはいい。そんなもん戻したら、感染症になる」

尿道管を外したことだけは何か言い訳を考えなくちゃいかんなぁ。しかし、何で私がそんな心配をせにゃならんのだ・・・・・・ そんなことを考えながら女は深い眠りへと落ちはじめる。

女主人の命じるままに、珍しくその身繕いをしてやった男が、彼女の身体に布団を掛けた時にはもう、インテグラは眉間にシワを寄せたまま、睡魔に攫われていたのだった。

男が珍しく自嘲の笑みをあからさまに浮かべ、目を細めて女の顔を見下ろす。

「おやすみ、インテグラ」ここまで悪戯をする気はなかったんだが。お前が煽るからだぞ―― そう、自分の我がままを棚に上げて思った男が耳元で呟いた声は、艶やかな美しいベルヴェットボイス。

だが、その麗しい低い声は、熟睡してしまった円熟の女主の耳には、残念ながら届かないのだ。



(2008.11.20のブログに追記)2008.11.12

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